「射精した瞬間に尿道が痛い」
「射精後、下腹部や金玉のあたりがズキズキする」
「以前は何ともなかったのに、最近射精すると痛みがある……」
このような症状があると、前立腺炎や性感染症など、何かの病気ではないかと不安になるかもしれません。
射精するときや射精後に痛みを感じる状態は、医学的に射精時痛・射精痛(painful ejaculation)と呼ばれます。
射精時痛には、前立腺炎や尿道炎、慢性骨盤痛症候群、薬の影響など、さまざまな原因が考えられます。
一時的な刺激による痛みの可能性もありますが、繰り返す場合や発熱・排尿時痛などを伴う場合は、泌尿器科で原因を調べる必要があります。
この記事では、調剤薬局勤務10年以上、泌尿器科門前薬局の経験もある薬剤師が、射精時痛の原因、症状の見分け方、薬との関係、受診目安を医学的な資料に基づいて解説します。
結論:射精すると痛い場合は、前立腺炎や尿道炎などが原因の可能性がある
最初に重要なポイントを整理します。
- 射精時・射精後の痛みには、前立腺炎、尿道炎、慢性骨盤痛症候群などの原因が考えられます。
- 痛む場所やタイミング、発熱・血尿・排尿時痛などの症状が原因を考える手がかりになります。
- 痛みを繰り返す場合や長引く場合は、泌尿器科で相談してください。
特に、発熱や悪寒、強い痛み、尿が出ないなどの症状がある場合は、早急な評価が必要です。
また、突然片側の精巣に強い痛みが起こった場合は、精巣捻転などの緊急性が高い病気も考えられます。
「射精した後だから大丈夫」と自己判断せず、痛みの程度やほかの症状を確認することが重要です。
射精時痛とは?射精するときや射精後に痛む状態
射精時痛とは、射精中や射精後に陰茎、尿道、精巣、会陰部、下腹部などに痛みや不快感を感じる状態です。
欧州泌尿器科学会(EAU)では、射精に伴う軽い不快感から強い痛みまでを射精時痛として扱っています。
痛みが現れる場所や持続時間には個人差があります。
射精時痛はどのくらいの男性に起こる?
EAUのガイドラインでは、一般男性における射精時痛の有病割合について、過去の研究で約1〜10%と報告されていることが紹介されています。
ただし、この数字には注意が必要です。
研究ごとに対象者や射精時痛の定義が異なり、推定値には幅があります。日本人男性全体の頻度を示す数字ではありません。
前立腺炎や慢性骨盤痛症候群などの患者では、一般男性より射精時痛が多く報告されています。
射精時痛は珍しい症状ではありませんが、原因を正しく判断することが大切です。
射精すると痛い主な原因6つ
射精時痛には、複数の原因が考えられます。
代表的な病気や状態を紹介します。
① 前立腺炎
前立腺炎は、射精時痛の原因として考えられる病気のひとつです。
前立腺は膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲むように存在する臓器です。
精液の一部となる前立腺液を分泌し、射精にも関わっています。
前立腺に炎症が起こると、会陰部や下腹部の痛み、排尿時の不快感、射精時痛などが現れる場合があります。
前立腺炎には、細菌感染が原因となるものと、明らかな細菌感染が確認されないものがあります。
特に急性細菌性前立腺炎では、次の症状に注意が必要です。
- 発熱や悪寒
- 強い会陰部痛・下腹部痛
- 頻尿
- 排尿時痛
- 尿が出にくい
- 全身のだるさ
発熱や強い痛みを伴う場合は、早めに医療機関を受診してください。
② 尿道炎・性感染症
射精時に尿道がヒリヒリする場合、尿道炎などが関係している可能性があります。
尿道炎の原因には、クラミジアや淋菌などの性感染症が含まれます。
代表的な症状は以下です。
- 排尿すると痛い
- 尿道がヒリヒリする
- 尿道から膿や分泌物が出る
- 尿道の出口に違和感がある
- 射精すると痛みがある
ただし、性感染症では症状が軽い場合や、自覚症状が乏しい場合もあります。
痛みだけで性感染症と判断することも、症状が軽いから感染していないと判断することもできません。
感染の可能性がある場合は、泌尿器科などで検査を受けてください。
③ 慢性骨盤痛症候群
射精後の痛みが何週間も続いたり、繰り返し起こったりする場合には、慢性骨盤痛症候群が関係している可能性があります。
慢性骨盤痛症候群では、前立腺や会陰部、陰茎、精巣、下腹部などに痛みが現れる場合があります。
明らかな細菌感染が確認されないことも多く、痛みが続くからといって細菌感染とは限りません。感染が確認されない場合に抗菌薬を繰り返し使用することは避け、医師と原因に応じた対応を相談します。
EAUの慢性骨盤痛ガイドラインでは、骨盤底筋の機能異常や神経系の変化なども評価対象とされています。
例えば、次のような症状が考えられます。
- 射精後に下腹部が痛む
- 会陰部に鈍い痛みが続く
- 長時間座ると不快感がある
- 排尿後もすっきりしない
- 痛みが改善したり悪化したりする
ただし、これらの症状だけで慢性骨盤痛症候群と診断することはできません。
感染症やほかの病気を除外したうえで、医師が総合的に判断します。
④ 精嚢や射精管の異常
精嚢は精液の一部を作る臓器です。
精嚢や射精管に結石や閉塞などがある場合にも、射精時痛が起こることがあります。
このような異常では、射精時痛に加えて、血精液症や精液量の変化などが見られる場合があります。
症状が続く場合には、医師が必要に応じて画像検査などを検討します。
⑤ 前立腺肥大症や手術後の変化
前立腺肥大症などの排尿障害がある男性でも、射精時痛が報告されています。
また、前立腺の手術、骨盤内の手術、放射線治療などの後に、射精時痛が起こる場合があります。
ただし、前立腺肥大症がある男性すべてに射精時痛が起こるわけではありません。
排尿症状や手術歴、服用薬などを含めて原因を考える必要があります。
⑥ 薬の影響
薬剤師として見逃したくないのが、薬による射精時痛です。
EAUのガイドラインやレビュー論文では、一部の抗うつ薬などと射精時痛との関連が報告されています。
ただし、薬を服用している人に射精時痛が起こったからといって、その薬が原因とは限りません。
薬を開始した時期、増量した時期、症状が現れた時期を確認することが大切です。
薬との関係が疑われる場合には、自己判断で中止せず、処方医や薬剤師に相談してください。
射精後に痛む場所で原因は変わる?
「射精すると痛い」といっても、痛みが現れる場所は人によって異なります。
痛む場所は原因を考える手がかりになりますが、それだけで病気を確定することはできません。
| 痛む場所 | 考えられる原因 | 確認したい症状 |
|---|---|---|
| 尿道・陰茎 | 尿道炎、粘膜への刺激など | 排尿時痛、分泌物、尿道の違和感 |
| 下腹部 | 前立腺炎、慢性骨盤痛症候群など | 頻尿、発熱、排尿時痛 |
| 会陰部 | 前立腺炎、慢性骨盤痛症候群など | 座位での痛み、排尿症状 |
| 精巣・陰嚢 | 精巣上体炎、精巣の病気など | 腫れ、発熱、片側の強い痛み |
| 射精後も広い範囲が痛い | 慢性骨盤痛症候群など | 持続期間、繰り返しの有無 |
突然片側の精巣に強い痛みが起こった場合は、射精との関係にかかわらず速やかに医療機関を受診してください。
精巣捻転は緊急の対応が必要になる病気であり、時間が経過すると精巣に重大な影響が生じる可能性があります。
射精時痛は自然に治る?何日続いたら病院に行くべき?
射精時痛が起こったとき、「少し様子を見れば治るのでは?」と考えるかもしれません。
しかし、射精時痛が自然に治るかどうかは原因によって異なります。
例えば、一時的な摩擦や刺激による軽い痛みであれば、刺激を避けることで改善する可能性があります。
一方、細菌性前立腺炎や性感染症などが原因の場合は、適切な診断と治療が必要です。
射精時痛について「何日以内なら正常」「何日以上なら病気」という、全員に当てはまる明確な基準はありません。
そのため、日数だけではなく、痛みの強さやほかの症状を含めて判断しましょう。
受診目安の一覧表
| 症状 | 受診の目安 |
|---|---|
| 突然の強い精巣痛、陰嚢の腫れ、吐き気など | 速やかに救急受診 |
| 尿が出ない、強い痛み、全身状態が悪い | 速やかに受診 |
| 発熱・悪寒を伴う射精時痛 | 当日中に受診 |
| 排尿時痛や尿道からの分泌物がある | 早めに泌尿器科などを受診 |
| 射精時痛を何度も繰り返す | 泌尿器科で相談 |
| 痛みが続く・悪化する | 泌尿器科で相談 |
| 軽い痛みが一度だけ起こり、すぐ改善した | 刺激を避けて経過を確認。再発する場合は受診 |
迷う場合は、早めに泌尿器科へ相談してください。
射精すると痛いときに自分でできる対処法
軽い痛みがある場合、受診までの間にできることを紹介します。
ただし、ここで紹介する方法は原因となる病気を治すものではありません。
① 痛みがある間は無理に射精しない
射精するたびに痛みが起こる場合、無理に性行為や自慰行為を繰り返さないようにしましょう。
「何回か射精すれば治る」という確かな医学的根拠はありません。
痛みが続く場合は、刺激を避けたうえで原因を確認することが大切です。
② 強い摩擦や刺激を避ける
自慰行為の際に強い摩擦を加えると、陰茎の皮膚や尿道口周囲に刺激が加わる場合があります。
皮膚の痛みや傷がある場合は、改善するまで刺激を避けてください。
痛みの原因が前立腺炎などの場合には、摩擦を避けるだけで治るとは限りません。
③ 痛みが出る状況を記録する
射精時痛が繰り返される場合、次のような情報を記録しておくと、医療機関での相談に役立ちます。
- いつから痛むか
- 射精中と射精後のどちらで痛むか
- どこが痛むか
- 痛みが何分・何時間続くか
- 排尿時痛や発熱があるか
- 最近開始・変更した薬があるか
こうした情報は、医師が原因を考える材料になります。
射精時痛にはどんな薬が使われる?
射精時痛の治療は、原因によって異なります。
射精時痛そのものに対して、すべての患者に同じ薬を使用するわけではありません。
細菌感染が原因の場合:抗菌薬
細菌性前立腺炎や尿道炎などが原因の場合、原因菌や病状に応じて抗菌薬が使用されます。
ただし、射精すると痛いからといって、必ず細菌感染があるわけではありません。
抗菌薬が必要かどうかは、医師が診察や検査結果に基づいて判断します。
以前処方された抗菌薬が残っていても、自己判断で服用しないでください。
慢性骨盤痛などの場合:原因に応じた治療
慢性骨盤痛症候群では、痛みや排尿症状、骨盤底筋の状態などを評価し、複数の治療方法が検討されます。
例えば、医師の判断で薬物療法や骨盤底筋に対する治療などが選択されることがあります。
ただし、特定の薬がすべての射精時痛に有効というわけではありません。
薬剤性が疑われる場合:処方内容の確認
薬の開始や増量後に射精時痛が起こった場合、薬との関係について確認します。
薬が原因と疑われる場合でも、患者自身の判断で中止することは避けてください。
必要に応じて、処方医が薬の変更や用量の調整などを検討します。
薬剤師コメント:射精時痛で確認したい服薬情報
射精時痛について医療機関に相談する際は、現在服用している薬も重要な情報になります。
特に、抗うつ薬などでは、射精に関する症状が副作用として報告されているものがあります。
ただし、服薬中に射精時痛が現れたとしても、薬との因果関係が確定するわけではありません。
薬の影響を考える際には、次のような情報が役立ちます。
- 現在服用している薬の名前
- 服用を開始した日
- 最近増量・減量した薬
- 射精時痛が現れた時期
- ほかに現れている症状
特に抗うつ薬などは、突然中止すると離脱症状や元の病気の悪化につながる場合があります。
射精時痛が気になる場合は、お薬手帳を持参して医師・薬剤師に相談してください。
射精時痛とEDは関係する?
射精時痛がある男性では、勃起機能の低下を同時に経験している場合もあります。
例えば、2005年に発表された前立腺肥大症に関連する排尿症状を持つ男性を対象とした研究では、射精時痛を訴える男性でEDの報告割合も高いことが示されています。
ただし、これは射精時痛がEDを直接引き起こすと証明した研究ではありません。
痛みへの不安や、背景にある泌尿器科疾患などが、性機能に影響している可能性も考えられます。
射精時痛と勃起機能の低下が同時にある場合は、どちらも医師に伝えてください。
よくある質問
Q. 射精すると尿道が痛いのは性感染症ですか?
尿道炎や性感染症が原因の可能性はありますが、痛みだけで判断することはできません。
排尿時痛や尿道からの分泌物などがある場合は、早めに泌尿器科などで相談してください。
Q. 射精後に下腹部が痛くなるのは前立腺炎ですか?
前立腺炎や慢性骨盤痛症候群などが関係している可能性があります。
ただし、下腹部痛だけで病気を確定することはできません。
痛みが続く場合や繰り返す場合は、泌尿器科を受診してください。
Q. オナニーの後に金玉が痛いのはなぜですか?
陰嚢や精巣周囲の痛みには、さまざまな原因が考えられます。
突然片側の精巣に強い痛みが起こった場合には、精巣捻転などの緊急性が高い病気も考えられます。
その場合は、様子を見ずに速やかに医療機関を受診してください。
Q. 射精後の痛みは放置しても治りますか?
一時的な刺激による軽い痛みであれば、改善する可能性があります。
ただし、感染症や前立腺炎などが原因の場合は、適切な治療が必要になることがあります。
痛みが続く場合や繰り返す場合は、自己判断で放置しないでください。
Q. 射精時痛は前立腺がんの症状ですか?
射精時痛があることだけで前立腺がんと判断することはできません。
前立腺炎など、ほかの原因も考えられます。
ただし、血尿や持続する痛みなどがある場合は、泌尿器科で原因を確認してください。
Q. 射精すると痛い場合は何科を受診しますか?
基本的には泌尿器科です。
性感染症の可能性がある場合は、性感染症の診療に対応している医療機関でも相談できます。
まとめ:射精すると痛い場合は、原因を決めつけず泌尿器科で相談しよう
射精時痛には、前立腺炎、尿道炎、慢性骨盤痛症候群、薬の影響など、さまざまな原因が考えられます。
一時的な刺激による痛みの可能性もありますが、痛みが続く場合や繰り返す場合は、泌尿器科で原因を確認することが大切です。
特に、発熱や悪寒、排尿時痛、強い精巣痛などがある場合は、早めに医療機関を受診してください。
また、服用中の薬が関係している可能性もあるため、受診する際にはお薬手帳を持参しましょう。
射精時痛は、原因によって必要な対応が異なります。無理に射精を繰り返したり、市販薬や残っている薬で自己判断したりせず、必要に応じて泌尿器科で相談してください。
関連記事
射精の感覚はあるのに精液が出なくなった方は、逆行性射精と薬による射精障害の違いもご確認ください。
射精や精液の仕組みについて詳しく知りたい方は、次の記事も参考にしてください。
参考文献
- European Association of Urology. EAU Guidelines on Sexual and Reproductive Health: Disorders of Ejaculation.
Disorders of Ejaculation - EAU Guidelines on Sexual and Reproductive Health - UrowebAn overview of ejaculatory disorders, covering premature, delayed, retrograde and painful ejaculation, anejaculation, an... - European Association of Urology. EAU Guidelines on Chronic Pelvic Pain: Diagnostic Evaluation.
Diagnostic Evaluation - EAU Guidelines on Chronic Pelvic Pain - UrowebThis chapter outlines the diagnostic evaluation of chronic pelvic pain, including general assessment, supplemental inves... - European Association of Urology. EAU Guidelines on Urological Infections.
The Guideline - EAU Guidelines on Urological Infections - UrowebExplore evidence-based recommendations for managing urological infections, from uncomplicated cystitis to urosepsis, pro... - Waqar M, et al. Painful Ejaculation – An Ignored Symptom. Cureus. 2020;12(10):e11253.
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov - Nickel JC, et al. Benign prostatic hyperplasia (BPH) and prostatitis: prevalence of painful ejaculation in men with clinical BPH. BJU International. 2005;95(4):571-574.
Benign prostatic hyperplasia (BPH) and prostatitis: prevalence of painful ejaculation in men with clinical BPH - PubMedOf sexually active men with LUTS suggestive of BPH, approximately 20% complain of specific prostatitis-like symptoms of ... - 日本泌尿器科学会.排尿痛がある、排尿時に痛い.
排尿痛がある、排尿時に痛い | 日本泌尿器科学会 (The Japanese Urological Association)【一般のみなさま】 - Centers for Disease Control and Prevention. STI Treatment Guidelines: Epididymitis.
Access Denied
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としています。個別の診断・治療に代わるものではありません。症状がある方は医療機関で相談してください。

