「男性ホルモンを増やすサプリ」は本当に効くのか?
最近疲れやすくなった、性欲が落ちた気がする、筋トレの成果が出にくくなった。このような悩みから、テストステロンを増やすサプリを調べる方は少なくありません。
Amazonや楽天を見ると、マカ、亜鉛、トンカットアリ、アシュワガンダなど数多くの商品が販売されています。しかし薬剤師として率直に言うと、多くの人が想像しているほど話は単純ではありません。
実は2019年に発表された有名な研究では、市販のテストステロンブースターに含まれる成分を調査した結果、テストステロン上昇を裏付ける研究が存在した成分は24.8%しかありませんでした。さらに61.5%の成分は、そもそもテストステロンへの影響を検証した研究自体が存在しませんでした。
つまり、「男性ホルモンを増やす」と宣伝されているサプリの多くは、科学的根拠が十分ではない可能性があるのです。
この記事では薬剤師の視点から、論文やガイドラインをもとに各成分のエビデンスを評価し、本当に期待できるサプリと期待しすぎない方がよいサプリを解説します。
この記事の結論
結論から言うと、現時点で比較的エビデンスがあるのはアシュワガンダ、トンカットアリ、亜鉛(欠乏者)、ビタミンD(欠乏者)です。
一方で、マカやアルギニンは人気が高いものの、テストステロン上昇を裏付けるデータは限定的です。また、どのサプリよりも重要なのは睡眠、筋力トレーニング、肥満改善、ストレス管理です。
薬剤師としては、サプリは主役ではなく補助と考えています。

そもそもテストステロンとは?
テストステロンは男性ホルモンの代表であり、筋肉、骨、性欲、勃起機能、活力、集中力などに深く関与しています。
加齢とともに徐々に低下することが知られており、男性更年期障害(LOH症候群)の原因の一つとしても注目されています。
ただし、「テストステロンが低い=すぐに治療が必要」というわけではありません。睡眠不足、肥満、ストレス、過度な飲酒などによっても一時的に低下することがあります。
そのため、本当に男性ホルモンを改善したいのであれば、まず生活習慣を見直すことが重要です。
テストステロンが低いと起こる症状
テストステロン低下によって現れる症状は人によって異なります。しかし、薬局で相談を受ける中でも、以下のような悩みは非常によく耳にします。
- 性欲低下
- 朝立ちの減少
- ED(勃起不全)
- 疲れやすい
- やる気が出ない
- 集中力の低下
- 筋肉がつきにくい
- 内臓脂肪の増加
これらの症状があるからといって必ずしも男性ホルモン低下が原因とは限りません。しかし、複数当てはまる場合は一度意識してみる価値があります。

市販サプリの現実
インターネットでは「男性ホルモンが3倍になった」「飲むだけで男らしさが復活した」といった広告を見かけることがあります。
しかし実際の研究を見ると、そのような劇的な結果を示したデータはほとんどありません。
市販のテストステロンブースターを分析した研究では、含有成分の多くに十分なエビデンスがなく、一部にはテストステロンを低下させる可能性が示唆された成分まで含まれていました。
薬剤師として最も伝えたいのは、「天然成分だから安全」「サプリだから安心」とは限らないということです。
実際に海外では、テストステロンブースターを名乗る製品から医薬品成分が検出され、FDAが警告を出した事例もあります。
だからこそ、広告ではなく成分を見ることが大切です。
エビデンスランキングSランク|アシュワガンダ
現時点で最も期待できる成分の一つがアシュワガンダです。
アシュワガンダはインド伝統医学(アーユルヴェーダ)で古くから使用されてきたハーブです。近年のランダム化比較試験では、アシュワガンダ摂取群でテストステロン上昇が確認されています。
また、ストレスホルモンであるコルチゾール低下にも関与する可能性が示されており、間接的に男性ホルモン環境を改善する可能性があります。
薬剤師として現時点で一つだけ選ぶなら、最も期待値が高い成分です。
アシュワガンダのメリット
- テストステロン上昇データがある
- ストレス軽減効果が期待できる
- 筋トレとの相性が良い
アシュワガンダの注意点
- 効果は医薬品ほど大きくない
- 甲状腺疾患がある場合は注意が必要
- 品質差が大きい
エビデンスランキングAランク|トンカットアリ
トンカットアリは東南アジアで古くから利用されているハーブです。近年は海外の男性ホルモンサプリで非常に人気があります。
一部の研究では総テストステロン上昇が示唆されていますが、アシュワガンダと比較すると研究数はまだ少ない状況です。そのため期待はできるものの、「確実にテストステロンを増やす」とまでは言えません。
現時点ではAランク評価が妥当だと考えています。
トンカットアリのメリット
- テストステロン上昇データがある
- 男性更年期分野で注目されている
- 海外では人気が高い
トンカットアリの注意点
- 研究数はまだ限定的
- 製品による品質差が大きい
- 長期安全性データは十分ではない
エビデンスランキングBランク|亜鉛
亜鉛は男性ホルモンサプリの定番成分ですが、「飲めばテストステロンが上がる成分」と考えるのは正確ではありません。
実際には、亜鉛不足の方ではテストステロン低下が報告されており、補充によって改善する可能性があります。一方で、亜鉛が十分足りている人が追加で摂取しても、大きな効果は期待しにくいと考えられています。
つまり、亜鉛は不足を補う目的では有効ですが、正常な人が男性ホルモンを大幅に増やすためのサプリとは言えません。
亜鉛のメリット
- 不足している場合は改善が期待できる
- 比較的安価
- 安全性が高い
亜鉛の注意点
- 過剰摂取は銅欠乏の原因になる
- 正常な人では効果が限定的
エビデンスランキングBランク|ビタミンD
ビタミンDも近年注目されている成分です。
一部の研究では、ビタミンD不足の男性でテストステロン改善が報告されています。しかし、正常値の方では明確な効果が確認されていません。
興味深いのは、日本人の多くがビタミンD不足傾向にあることです。デスクワーク中心の生活や紫外線対策の影響もあり、知らないうちに不足していることがあります。
そのため、「男性ホルモンを増やすサプリ」というより、「不足しているなら補うべき栄養素」と考える方が適切でしょう。
ビタミンDのメリット
- 欠乏者では改善が期待できる
- 骨や免疫にも重要
- 日本人は不足しやすい
ビタミンDの注意点
- 正常値の人では効果が限定的
- 過剰摂取は高カルシウム血症のリスクがある
エビデンスランキングCランク|マカ
マカは非常に有名な男性向けサプリです。
しかし論文を読むと、マカには性欲や活力改善を示唆する研究はあるものの、テストステロンそのものを有意に増加させたデータは多くありません。
つまり、
「マカ=男性ホルモンが増える」
というイメージは少し誇張されています。
薬剤師としては、マカを否定するつもりはありません。しかし、テストステロン増加を目的とするなら優先順位は高くありません。
エビデンスランキングCランク|アルギニン
アルギニンは血流改善成分として有名です。
一酸化窒素(NO)の産生を助けることで血管拡張に関与し、運動パフォーマンスや勃起機能の補助として利用されています。
ただし、テストステロン増加とは別の話です。
そのため、
「男性ホルモンを増やしたい」
方よりも、
「勃起力が気になる」
方に向いている成分と言えます。
エビデンスランキングDランク|D-アスパラギン酸(DAA)
一時期は海外の筋トレ界隈で非常に人気だった成分です。
初期研究ではテストステロン上昇が報告されましたが、その後の研究では再現性が乏しく、否定的な結果も増えています。
現在のエビデンスを総合すると、積極的におすすめする理由は少ないと考えています。
薬剤師が本当にお金を出すなら?
ここまで読んでいただいた方に、私自身の考えをお伝えします。
もし私が「男性ホルモンを改善したい」と考えた場合、優先順位は以下の通りです。
1位:睡眠改善
2位:筋力トレーニング
3位:体脂肪率の改善
4位:ビタミンD補充
5位:アシュワガンダ
正直なところ、サプリだけで人生が変わるほどテストステロンが上昇するとは考えていません。
一方で、睡眠時間を増やしたり、肥満を改善したりする方が、はるかに大きな効果を得られる可能性があります。
そのため薬剤師としては、「まず生活習慣、その後サプリ」という順番をおすすめします。

サプリより重要な5つの習慣
睡眠
テストステロンの多くは睡眠中に分泌されます。慢性的な睡眠不足は男性ホルモン低下の大きな原因です。
筋力トレーニング
スクワットやデッドリフトなど、大筋群を使うトレーニングは男性ホルモン環境の改善に役立つ可能性があります。
肥満改善
内臓脂肪が増えるとテストステロン低下につながることがあります。
過度な飲酒を避ける
慢性的な飲酒は男性ホルモン低下の原因になる可能性があります。
ストレス管理
ストレスホルモンであるコルチゾールが高い状態は、テストステロンに悪影響を与えることがあります。

よくある質問
Q. テストステロンサプリだけで男性ホルモンは増えますか?
期待しすぎない方がよいでしょう。生活習慣改善の方が影響は大きい可能性があります。
Q. 一番おすすめの成分は何ですか?
現時点ではアシュワガンダです。ただし万能ではなく、生活習慣改善が前提です。
Q. マカは意味がないのですか?
意味がないわけではありません。性欲や活力改善を感じる方はいますが、テストステロン増加エビデンスは限定的です。
Q. 病院の治療とサプリは何が違いますか?
病院では必要に応じて男性ホルモン補充療法(TRT)が検討されます。サプリとは効果の大きさが異なります。
Q. 男性ホルモンが低いか調べる方法はありますか?
医療機関で血液検査を受けることで測定できます。男性更年期が疑われる場合は泌尿器科やメンズヘルス外来への相談がおすすめです。
まとめ
テストステロンを増やすサプリは数多く存在しますが、科学的根拠が十分な成分は限られています。
現時点で比較的期待できるのは、アシュワガンダ、トンカットアリ、亜鉛(欠乏者)、ビタミンD(欠乏者)です。一方で、マカやアルギニンは人気があるものの、テストステロン上昇を裏付けるデータは限定的です。
薬剤師として最も伝えたいのは、「サプリは補助であり主役ではない」ということです。本気で男性ホルモンを改善したいのであれば、まず睡眠、運動、肥満改善、ストレス管理を優先してください。その上でサプリを活用するのが、最も合理的な選択だと考えています。
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参考文献
- Clemesha CG, et al. Testosterone Boosting Supplements Composition and Claims Are Not Supported by the Academic Literature. World J Mens Health. 2020.
- Lopresti AL, et al. Effects of Ashwagandha Supplementation on Testosterone and Well-being. Am J Mens Health. 2019.
- Pilz S, et al. Effect of Vitamin D Supplementation on Testosterone Levels in Men. Horm Metab Res. 2011.
- Prasad AS, et al. Zinc status and serum testosterone levels. Nutrition. 1996.
- 日本メンズヘルス医学会 LOH症候群診療ガイドライン
- 日本泌尿器科学会 男性更年期障害診療の手引き

