月21回以上で前立腺がんリスクが低い?約3万人を追跡した「射精回数」の研究

性と健康

「射精する回数が多いと、前立腺がんになりにくい」

そんな話を聞いたことはありませんか?

ちょっと怪しい健康情報のようにも聞こえますが、実はこのテーマ、約3万2,000人の男性を対象にした研究があります。

しかも注目された数字が、

「月21回以上」

です。

いったい何がわかったのでしょうか?

今回は「射精回数と前立腺がん」という少し気になる研究を、薬剤師の視点からわかりやすく解説します。

結論|射精回数が多い男性では前立腺がんが少なかった

先に結論です。

2016年に医学誌『European Urology』に掲載された研究では、射精回数が多い男性ほど前立腺がんと診断される割合が低い傾向が確認されました。

ただし、非常に重要なのが、

「月21回以上射精すれば前立腺がんを予防できる」と証明されたわけではない

ということです。

あくまで「射精頻度と前立腺がんリスクとの関連」を調べた観察研究として理解する必要があります。

約3万2,000人の男性を調査した研究

研究に参加したのは、米国のHealth Professionals Follow-up Studyに参加していた31,925人の男性

研究者は男性たちに、

  • 20~29歳
  • 40~49歳
  • 調査開始前の1年間

について、1か月あたりの平均射精回数を質問しました。

ここでいう「射精」には、性交だけでなく、自慰(マスターベーション)や夢精なども含まれています。

そして1992年から2010年まで追跡。

その間に3,839人が前立腺がんと診断されました。

そこで研究者が射精回数と前立腺がんとの関係を調べたところ、興味深い結果が出てきます。

「月21回以上」でリスクが約2割低かった

基準となったのは、月4~7回射精していた男性です。

それと比較すると、月21回以上だった男性では前立腺がんと診断されるリスクが、

20~29歳の射精頻度:19%低い

40~49歳の射精頻度:22%低い

という結果でした。

つまり研究上は、

「射精回数が多かった男性ほど、前立腺がんが少なかった」

という関連が確認されたわけです。

なかなかインパクトのある数字ですよね。

なぜ射精回数と前立腺が関係するの?

ここはまだ、はっきりとはわかっていません。

仮説のひとつとして考えられているのが、射精によって前立腺液が定期的に排出されることです。

前立腺の分泌物が排出されることが、前立腺内の環境に何らかの影響を与えている可能性があります。

ただし、

「射精すると有害物質が排出されるから、がんを防げる」

といった単純な話まで証明されているわけではありません。

この部分はまだ研究段階です。

じゃあ月21回を目標にしたほうがいい?

ここは誤解してほしくないポイントです。

月21回は医学的な推奨回数ではありません。

今回の研究で「月21回以上」というグループの前立腺がんリスクが低かったため、この数字が有名になっただけです。

例えば、

「月20回ではダメ」

「月21回以上なら前立腺がんを予防できる」

「射精回数を増やしたほうが健康にいい」

という意味ではありません。

研究者も、射精頻度そのものが前立腺がんリスクを低下させたと証明したわけではありません。

この研究には弱点もある

約3万2,000人を長期間追跡した研究という点は大きな強みです。

一方で、RCT(ランダム化比較試験)ではありません。

さらに、過去の射精回数について、

「20代のころは月何回くらい射精していましたか?」

と本人に思い出して回答してもらっています。

当然、正確に覚えていない人もいるでしょう。

また、射精回数が多い男性と少ない男性では、運動習慣や健康状態、ホルモン、性生活など、さまざまな違いが存在する可能性があります。

つまり、

「射精回数が多い → 前立腺がんが減る」

という因果関係までは証明できないのです。

薬剤師コメント|「21回」という数字だけを一人歩きさせないことが大切

この研究は非常に面白いです。

しかし、医学論文を読むときに気をつけたいのが、インパクトのある数字だけを切り取らないことです。

「月21回以上で前立腺がんが減る」

だけを見ると、

「じゃあ頑張って21回射精しよう」

と思う人がいるかもしれません。

しかし、現時点ではそのような医学的推奨はありません。

射精回数にはかなり個人差があります。

無理に回数を増やす必要はありませんし、「自分は月21回もないから前立腺がんになりやすい」と心配する必要もありません。

実はこの研究、ガイドラインにも登場する

興味深いことに、この研究は現在のEAU(欧州泌尿器科学会)の前立腺がんガイドラインでも引用されている研究のひとつです。

つまり、単なるネット上の噂ではなく、泌尿器科領域で実際に検討されている研究テーマです。

ただし、ガイドラインが「前立腺がん予防のために月21回以上射精しましょう」と推奨しているわけではありません。

ここは必ず分けて考える必要があります。

まとめ|「月21回」は面白い。でもノルマではない

約3万2,000人の男性を追跡した研究では、射精頻度が高い男性で前立腺がんの診断リスクが低い傾向が報告されました。

特に有名になったのが「月21回以上」という数字です。

ただし、

月21回以上射精すれば前立腺がんを予防できる、と証明されたわけではありません。

射精と前立腺の健康には、まだわかっていないことがたくさんあります。

「男性の体って面白いな」

そんな気持ちで楽しんでもらいたい研究のひとつです。

参考文献

Rider JR, Wilson KM, Sinnott JA, et al. Ejaculation Frequency and Risk of Prostate Cancer: Updated Results with an Additional Decade of Follow-up. European Urology. 2016;70(6):974-982.

Giovannucci E, Liu Y, Platz EA, Stampfer MJ, Willett WC. Ejaculation Frequency and Subsequent Risk of Prostate Cancer. JAMA. 2004;291(13):1578-1586.

European Association of Urology. EAU Guidelines on Prostate Cancer.

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