「薬を飲み始めてから性欲が落ちた気がする。」
「勃起しにくくなった。」
「以前よりイケなくなった。」
このような悩みを抱えている方は少なくありません。
実は、薬によっては、
・性欲低下
・ED(勃起障害)
・射精障害
・オーガズム障害
などの副作用が起こることがあります。
一方で、インターネット上では、
「この薬を飲むと必ずEDになる」
「AGA治療薬を飲むと男性機能が終わる」
など極端な情報も少なくありません。
そこで今回は、現役薬剤師として、
・添付文書
・インタビューフォーム
・国内臨床試験
・海外論文
を確認し、
「100人飲んだら何人くらいに起こるのか?」
という視点で、できるだけわかりやすく解説します。
まず知っておきたいこと
性機能に関する副作用は、大きく3種類に分かれます。
性欲低下
「したいと思わない」
「性的なことを考えなくなった」
という状態です。
ED(勃起障害)
「勃ちにくい」
「硬さが足りない」
「維持できない」
という状態です。
射精障害
「勃起はするけどイケない」
「射精まで極端に時間がかかる」
という状態です。
実はこれらは全く別の副作用です。
そのため、
「性欲はあるけど勃起しない」
「勃起はするけど射精できない」
というケースも珍しくありません。
薬による性機能障害はどれくらい多い?
薬剤によってかなり差があります。
目安としては以下のようになります。
| 薬剤群 | 100人飲んだ場合の目安 |
|---|---|
| SSRI(抗うつ薬) | 30〜80人 |
| 抗精神病薬 | 25〜60人 |
| デュタステリド(AGA) | 8〜11人 |
| フィナステリド(AGA) | 1人前後 |
| 降圧薬 | 数人程度 |
ただし、ここで重要なのは、
「性機能障害は申告されにくい副作用」
ということです。
実際、患者さんが自分から相談するケースは多くありません。
そのため、
添付文書では低く見えても、実際の臨床ではもっと多く経験されている可能性があります。
抗うつ薬(SSRI)
対象となる薬
・レクサプロ(エスシタロプラム)
・ジェイゾロフト(セルトラリン)
・パキシル(パロキセチン)
・デプロメール(フルボキサミン)
これらの薬では、
海外研究では30〜80%程度に何らかの性機能障害が認められたと報告されています。
つまり、
100人飲むと30〜80人程度が、
・性欲低下
・ED
・射精遅延
・オーガズム障害
のいずれかを経験する可能性があります。
ただし、この数字には、
「医師が積極的に質問した研究」
が含まれています。
そのため、添付文書より高い数字になっています。
レクサプロ(エスシタロプラム)の場合
国内臨床試験では、
男性252人中、
・射精障害:11人(4.4%)
・射精遅延:2人(0.8%)
・勃起不全:1人(0.4%)
・リビドー減退:1人(0.4%)
と報告されています。
つまり、
100人飲むと、
・射精障害 → 約4人
・ED → 約1人未満
・性欲低下 → 約1人未満
という計算になります。
意外と少なく感じるかもしれません。
フィナステリド(プロペシア)
AGA治療薬として非常によく使われる薬です。
国内試験では、
・性欲低下:1.1%
・勃起機能不全:0.7%
・射精障害:0.4%
・精液量減少:0.4%
と報告されています。
つまり、
100人飲むと、
・性欲低下 → 約1人
・ED → 約1人未満
・射精障害 → 約1人未満
という計算になります。
逆に言えば、
95〜99人程度は問題なく服用できているとも言えます。
そのため、
「フィナステリドを飲むと必ずEDになる」
という情報は正確ではありません。
デュタステリド(ザガーロ)
デュタステリドは、フィナステリドより強力なAGA治療薬です。
国内52週間試験では、
・勃起不全:10.8%
・リビドー減退:8.3%
・射精障害:4.2%
が報告されています。
つまり、
100人飲むと、
・ED → 約11人
・性欲低下 → 約8人
・射精障害 → 約4人
という計算になります。
フィナステリドより副作用頻度は高めです。
そのため、
「副作用を最小限にしたい」
という方では、
まずフィナステリドから開始するケースも多くあります。
抗精神病薬
代表的な薬
・リスペリドン
・パリペリドン
・オランザピン
・クエチアピン
これらでは、
100人中25〜60人程度に性機能障害が起こる可能性があると報告されています。
特にリスペリドンは、
プロラクチンというホルモンを上昇させやすく、
・性欲低下
・ED
・射精障害
につながることがあります。
降圧薬
昔からEDとの関連が指摘されています。
特に、
・β遮断薬
・サイアザイド系利尿薬
では報告があります。
ただし、
近年の降圧薬では頻度はかなり低くなっています。
また、
高血圧そのものがEDの原因になることも分かっています。
そのため、
「薬のせい」
と決めつけることはできません。
薬剤師として伝えたいこと
もし、
・性欲が落ちた
・勃起しにくい
・イケない
という症状があった場合、
まず確認してほしいのは、
「薬を始めた時期と一致しているか」
です。
例えば、
薬開始
↓
2〜4週間後
↓
性欲低下
このような経過であれば、
薬剤性の可能性があります。
自己判断で中止してはいけません
特に、
・抗うつ薬
・抗精神病薬
では、
急に中止すると、
・離脱症状
・病状悪化
・再発
につながることがあります。
まずは主治医や薬剤師へ相談してください。
薬によっては、
・減量
・薬剤変更
・ED治療薬追加
などで改善するケースもあります。
まとめ
・薬によって性欲低下やEDが起こることはある
・特にSSRIや抗精神病薬では頻度が高い
・フィナステリドは1%前後
・デュタステリドは5〜10%前後
・自己判断で中止してはいけない
・困った時は主治医や薬剤師へ相談することが重要
性機能障害は、生活の質(QOL)に大きく影響する副作用です。
しかし、
「治療のためだから仕方ない」
と我慢している患者さんも少なくありません。
もし悩んでいる場合は、
遠慮せず医師や薬剤師へ相談してみてください。
【参考文献】
・フィナステリド インタビューフォーム
・ザガーロ 添付文書
・エスシタロプラム インタビューフォーム
・Montejo AL, et al. Incidence of sexual dysfunction associated with antidepressant agents.
・日本うつ病学会治療ガイドライン

